金木犀のアリア
「理久が周桜とは幼なじみだから、周桜の当時の話を聞いたんだが、初めの1年くらいは緊張で震えて泣きながら弾いていたらしい」



「!? ……彼が!?」



「信じられないだろ?」



「ええ……」



「あいつの演奏の先には、聴き手がいる。

数日前にヴァイオリンの課題曲『ヴォカリーズ』を聴いたが……」



「どうだったの!?」



「……負けられないと本気で思った」



「貢が!?」




安坂は詩月の演奏を聴き、――もうここまで仕上げているのか?と耳を疑った。



詩月の演奏にしだいに人垣が広がっていく。



安坂は演奏を聴きながら、師事していたヴァイオリンの師匠を思い出した。




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