金木犀のアリア
 数年前。

出張の帰り、事故に遭い左手を負傷し、退職した准教授を――。



彼の演奏の先にも聴き手がいた。



詩月の演奏姿と元師匠の演奏が重なる。



安坂は、郁子の問いには応えず食い入るように、詩月の演奏を聴いている。



 聴いている調べはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調、作品64。

通称「メンコン」。

ベートーヴェン、ブラームスの作品と並んで『3大ヴァイオリン協奏曲』言われている名曲だ。



 1884年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲は、穏やかな情緒の美しい旋律でドイツ·ロマン派音楽を代表する名作だ。


3つの楽章からなる全編通して、約演奏時間30分の曲。


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