金木犀のアリア
ようやく順番が回り、詩月は名前を呼ばれて立ち上がったが、目眩と痛みでふらつき真っ直ぐ歩けず、試験監督の職員に支えられ、席に着いた。
「そんな状態で弾けますか?」
試験監督の職員は尋ねたが、詩月は「はい」と頼りなく答えただけだった。
天才ピアニスト周桜宗月の息子で、付属高校音楽科首席という看板。
高校の授業での演奏を大学側も充分知ってはいるが、実技試験当日の演奏は合否判定には不可欠だ。
合格ラインに達しなければ容赦なく不合格になる。
――残念だが、あの状態ではまともに演奏できまい
実技試験ピアノ演奏を判定する教授達も監督の職員も思った。
が、詩月が曲を弾き始めると彼らは、一様に耳を疑った。
「そんな状態で弾けますか?」
試験監督の職員は尋ねたが、詩月は「はい」と頼りなく答えただけだった。
天才ピアニスト周桜宗月の息子で、付属高校音楽科首席という看板。
高校の授業での演奏を大学側も充分知ってはいるが、実技試験当日の演奏は合否判定には不可欠だ。
合格ラインに達しなければ容赦なく不合格になる。
――残念だが、あの状態ではまともに演奏できまい
実技試験ピアノ演奏を判定する教授達も監督の職員も思った。
が、詩月が曲を弾き始めると彼らは、一様に耳を疑った。