金木犀のアリア
 受験の実技試験。

もし、失敗すれば不合格になる……ことを承知の上で、この難曲を!?



 「ラ・カンパネラ」パガニーニによる超絶技巧練習曲No.3変イ短調。


無謀な演奏とも思える。



が、実技試験にこの曲を演奏する強気な姿勢と自信が、どこまで本気なのかを見極めたい気持ちを駆り立てさせる。


とても弾ききれるとは思えない。


たかが、音大志望の高校生に弾きこなせる曲ではない。


ましてや、まともに歩けないほどの体調で、手に負える曲ではないが、果たして本当に弾けないのか?


詩月の演奏はそうは思えなかった。


演奏が、弾き始めからミスなく続いている。


曲が進むごと、緊張と期待が高まる。


「頑張れ」と声援さえ贈りたくなるほどだ。


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