金木犀のアリア
「何が可笑しい?」


「……だって、すごく詳しいんだもの」


「曲を弾く時には、その曲の情報を調べるのは常識だ」


詩月はきっぱりと言う。


「それはそうだけど……びっくり。

フォーレとサラサーテとスメタナが滝廉太郎に結び付いて、『夢のあとに』と『ツィゴイネルワイゼン』と、『モルダウ』と『荒城の月』が似てるなんて……」


「似てるだろう?」

詩月は、自慢気に言う。


やはり、彼は凡人ではないなと郁子は思う。



「実証してみるか? 実技試験日に」


「貴方が言うと、ほんとに演奏しそうで恐い」


「もしも弾いたら、鉄面皮も卒倒しそうだな」


「ウソでしょ!? あの西之宮教授が、許すとは思えないわよ。

本当に演奏する気ではないでしょうね?」


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