金木犀のアリア
ありふれた日常、流れていく時の中で無数にある音。


生きとし生ける総てに音があり、独自の音を奏でる。



「周桜!?」

教授が不思議そうな顔で、詩月を覗きこむ。



ざわめきが起こり始めたがが、詩月は我関せずだ。



平然と演奏を続ける。



「ねぇ、彼……ツィゴイネルワイゼンを弾く予定ではなかったの?」



「確か、そうよ。

だって……ほら、ここにツィゴイネルワイゼンって書いてあるもの」



あちらこちらで、演奏曲のリストを見せ合いながらヒソヒソと話している。



何故?という疑問……よりも突然の曲変更にも関わらず、その演奏の見事さに圧倒され、いつの間にかざわめきが静けさに変わっていった。



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