金木犀のアリア
「ピアノとヴァイオリン、両立なんて器用なことができるとは思っていない。

でも、母のヴァイオリンを聴き、弾けなくなった母の傍らで弾き始めた演奏や元ヴァイオリンの師匠リリィから教わったものが、どこまで通用するのか?

試してみたくなったんだ……真剣にヴァイオリンを弾いてみたくなったんだ」




郁子が、詩月の言葉に驚いたような顔をする。




「去年の秋。

貴方のヴァイオリン演奏を聴いた時、普段の貴方の演奏とあまりに違っていて……。

何故?って不思議だったの」



詩月は、小さく溜め息を吐く。




「貢との話題にもなって、3年生や大学でも話題になってたって」



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