ご主人様に監禁されて
「……どのレベルって…」
しばし目を伏せ、考え込む。
「……メイ、あんまり上手に言えないんですけど…」
「俺、メイちゃんの口からどれくらい嫌なのか聞きてーんだけど」
ぶっきらぼうに押したティンに、メイは落とすようにつぶやいた。
「…メイを拾ってくれた時は、嬉しかったんです。
だってメイが元いたところは殴られたりご飯食べられなかったり、地獄みたいだったから、そりゃあお兄ちゃんたちはいたけど、それを差し引いても辛かった。
離れるのはすごくすごく辛かったけど、でもお約束したんです、“必ず幸せになる”って。
でも、大旦那さまのお屋敷で幸せなんてなかった」
暴力沙汰に巻き込まれると幼児退行するのは、もといた所が原因か。
眉を歪めたリルは、本人が必死に喋ってるのを突っ込むわけには行かないとこらえた。
「メイは、エルナリーゼさんとして扱われて、見たこともあったことも無いエルナリーゼさんみたいに振舞わないと、ご飯抜きとか殴られたりとかしました。
これじゃあ孤児園にいた時と…ううんーもっとひどいかもしれない。
とにかく、メイはメイじゃなくさせられました」
「……メイちゃん…」
「でもその時のことあんまり覚えてないんです。
たぶん殴られたから、記憶が曖昧なんだと思うんです。
だから、そんな辛い思い出じゃあないんです」
明るく振舞おうとしていたメイだか、記憶がないというだけで残酷である。
「そこでご主人さまが髪の毛を切ってくれました。
激怒した大旦那さまに捨てられて一一ご主人さまが拾ってくれたから、メイはメイに戻れたんです」
あまりにも、メイは嬉しそうに言った。
だからリルはあえてなにも言わずに、飲み込む。
ルイがメイを手に入れるためにした行為かもしれない、下心があったやもしれないと伝えようかと思ったのだが。
今それを伝えたところで、彼女がルイに失望することはないだろう。
もしかしたらそれも承知の上、かもしれない。
それくらいメイの目は、ルコーラの話を要求したのに一一輝いていた。