ご主人様に監禁されて
「……っと、大旦那様のお話でした。
えと、とにかくメイはご主人さまに助けられて生きてたんです。反対に、大旦那さまにはいつも殺されてきたんです」
自由や、個性や、メイそのものを殺されてきた。
あの事件だって、メイがエルナリーゼに似ていなければ起きなかった。
メイの個性ゆえのものではない。
徹底的に殺されてきたのだ。
反対にルイには生かされたという。
個性を重んじられ、愛し想われ過ごしてきた。
「すごくすごく辛かったし、ご主人さまも大旦那さまを嫌ってたみたいですから、メイもすごくすごく嫌いです。
メイが嫌だって言っても、エルナリーゼはそんな事言わないって返されちゃうんです。だから悪いし、嫌いです」
「……辛かったですね」
「痛いことは考えたくないです。
だから、メイは一一2度とメイとご主人さまの前に現れて欲しくないです」
「あなたは一応娘です、彼が死んだとしたら?」
「メイに親はいませんです」
戸籍上での話を、彼女は知らないのか。
目を見開くリルだったが、それもそうかと納得した。
ルイとて、メイに兄と呼ばれたくないだろう。
「でも大旦那さまが死んだら…どうだろ、今は憎いから、嬉しくなるのかなぁ…でも人が死んで嬉しいはあんまり良くないです…うーん」
純粋すぎる彼女は考え込んでしまった。
道徳的にあまり良くないことを知ってるのだ。
一一リルは、覚悟を聞きたかった。
これから彼女は人を殺す。
彼女にとっては最低最悪の人間で憎悪しかないが、リルより深く関わってきたルイやメイはどうだろうか。
ルイは、メイのために憎んだ。
ルイの兄は、母親のために憎んだ。
ならばメイは。
道徳的なことを抜きにして、憎悪の有無を聞きたかったのだ。
じゃないと、首を絞める縄が緩んでしまう。
ためらいが生まれてしまうではないか。