ご主人様に監禁されて
苦悩し、迷い、狂っていく男の嘆きが感じられる文章に、ルイはぞくりとあわだつのを感じた。
似通ってると、思ったからだ。
「……」
ずっと疑問だった。
妻のみを愛していて、周りを愛さない彼が。
息子には見向きもせず、ずっと妻の影を追っていた。
強く強く欲していて、でもそれは決して満たされなかったから追っているのではないだろうか。
そしてそれは誰かに似ていないか。
何をしてでも手に入れたい、けれど手に入らないからまた欲しくなる。
抑えていてもあふれでてしまうこの想いを抱えて苦悩し、世界を彼女中心に見ている男。
それは、今目の前にいる男に似ていないか。
「……そう、か」
そうか。
「この、異常なまでのメイへの飢餓は一一ルコーラから来ていたものだったのか」
あの男の額から流れる紅い血を思い出した。
あの血が、この体を流れているのか。
このとき、ルイは初めて一一父親というものを考えた。
『……そうか、私はお前から奪うことしかしてないな』
あの時の声がこだまする。
そうだ、何一つ与えられなかった。
けれど、この異常なまでの感情は彼のものだ。
これはもらったと言えるのだろうか。