ご主人様に監禁されて


「…日本語とはいえ、あんまりそういうこと言わない方がいいんじゃないの……」

『だいじょうぶ、この国は馬鹿ばかりですから。虫唾、なんて難しいことばわかる人間いやしませんよ』

「あっそ…」


こんな人が王位継承者でいいのか、と呆れる。

末恐ろしいことこの上ない。



『それはそうと、私があの子に目をかけてるのは本当です。

ずいぶんと不幸な子ですからね、幸せになる権利は十分にある』


「幸せな人は不幸に、不幸な人は幸せに……だっけ」


『ふふ、そうですそうです』


彼女の持論兼口癖のようなものだ。


残酷で優しい人、すべてを堕とさず、すべてを救わない。

悪魔にもなりうるし、天使にもなりうるのだ。


『じゃああの子が起きたら連絡をしてください。こっちの時間が何時でも構いません。通すように周りに言っておきます』


「……わかった」


『連絡してくれてありがとうございます、あなたの声が聞けて幸せでした。

……あの子を助けてくれてありがとうございました』


「助けたなんて、拾っただけ」


『あなたは聖母のようですね。本当に…呆れるくらい謙虚で優しいんだから』


褒められてるのかけなされてるのか、首を捻っていると。



『気をつけてくださいね、そういうの。下手したら自分の首を締めますよ』


「……」

どうやらお説教だったようだ。

甘んじて受け入れようと心に留めておく。


彼女の言うことは大抵合っているのを瑠璃はよく知っていたから。
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