ご主人様に監禁されて



事態がわかっていない運転手が、不思議そうな顔でガチャリとドアを開ける。

カッ、とヒールの音を響かせ、女が一人降りてくる。


「まあまあ…お久しぶりですね、ルイ・ヒューアス」


軽やかな声に、満面の笑み。

黄金をとかしたみたいな金髪は、ゆるやかにカーブを描いている。

白い肌に生える、血のように紅い瞳。



「ようこそ、日本へ。

リル・ドリュールさま」



かしずいて言うと、奥から出てきた着崩したスーツを着た男が駆け寄ってきた。

「ご、ごめんなさいっ…無理矢理来てしまって…
あの、こんなやつに頭なんて下げる必要ないんで」


童顔のあどけない顔をした、ミルクティーみたいな髪色をした男。

年齢がすごく下に見える。

日本語が上手で、とても流暢だ。


「あ、私はティン・ニグラスと言いまして、リルさまの執事を」

「わああ!見て見て!ティン、これ桜じゃないかしらっ!」

「おい、ちょ、リル!てんめ…おしかけておいて勝手はだな…」

「いつ咲くのでしょうこれ?
あら…見て、向こうに梅の木があります!なつかしー」


吸い寄せられるように庭に行き、きゃあきゃあと騒ぎ出す。


無邪気すぎる彼女に執事のティンは口調を乱しまくりながら貶す。



「……野崎、大丈夫?」

呆然としている野崎に話しかける。




「…あ、あれが――カサンデュールの第三王位継承者なんですか……?」




なんだか夢が裏切られて泣きそうな野崎に、頷くしかないルイだった。


< 41 / 263 >

この作品をシェア

pagetop