ご主人様に監禁されて
事態がわかっていない運転手が、不思議そうな顔でガチャリとドアを開ける。
カッ、とヒールの音を響かせ、女が一人降りてくる。
「まあまあ…お久しぶりですね、ルイ・ヒューアス」
軽やかな声に、満面の笑み。
黄金をとかしたみたいな金髪は、ゆるやかにカーブを描いている。
白い肌に生える、血のように紅い瞳。
「ようこそ、日本へ。
リル・ドリュールさま」
かしずいて言うと、奥から出てきた着崩したスーツを着た男が駆け寄ってきた。
「ご、ごめんなさいっ…無理矢理来てしまって…
あの、こんなやつに頭なんて下げる必要ないんで」
童顔のあどけない顔をした、ミルクティーみたいな髪色をした男。
年齢がすごく下に見える。
日本語が上手で、とても流暢だ。
「あ、私はティン・ニグラスと言いまして、リルさまの執事を」
「わああ!見て見て!ティン、これ桜じゃないかしらっ!」
「おい、ちょ、リル!てんめ…おしかけておいて勝手はだな…」
「いつ咲くのでしょうこれ?
あら…見て、向こうに梅の木があります!なつかしー」
吸い寄せられるように庭に行き、きゃあきゃあと騒ぎ出す。
無邪気すぎる彼女に執事のティンは口調を乱しまくりながら貶す。
「……野崎、大丈夫?」
呆然としている野崎に話しかける。
「…あ、あれが――カサンデュールの第三王位継承者なんですか……?」
なんだか夢が裏切られて泣きそうな野崎に、頷くしかないルイだった。