ご主人様に監禁されて
◇◇◇
その日の夜、深夜である。
ルイの部屋に独り言が響いた。
『…無事到着なされた。ああ、二人とも、だ』
仕事のものしかない、部屋というよりかは仕事部屋という感じだが。
ここはれっきとしたルイの部屋である。
カサンデュールの言語で話す相手は、この間の兄であった。
リルの姉の夫であり、王族の兄。
『悪いなぁ、迷惑かけて』
『…本当だ、僕だって暇ではないんだ』
『しかも2人も』
『…どうせ執事を連れてくるなら、もう少し話のわかる年上を連れてきて欲しかったものだ』
よりによって同い年の執事なんて、執事とは言えないじゃないか。
しかし、年上の分別のつく大人の執事だったら、きっとまず逃亡を止めていただろう。
その点で言ったら扱いやすいのかもしれない。
『え?なんだ、お前知らないのか』
キョトンとした声で言う相手に、なんだ、と低い声で返すルイ。
弟とは違って若干軽い性格のようだ。
『あのティン・二グラスって執事、曰付きらしいんだ』
『あの童顔ミルクティーがか?』
武闘派でもなさそうだし、頭もそんなに良くない気がする。
そんな彼に何があるのだろうか。
『姫様は昔日本にいたらしいんだ。
で、あのティンは日本人らしいんだよ』
『あ、あれが日本人!?』
思わず叫んだルイだが、考え直す。
確かに、髪を染めただけのように見えないこともない。
目は黒いし、肌もどちらかといえば日本より…かもしれない。焼けてないと言われればそれまでだが。
『で、そのティンだけど、どうやら日本から勝手に逃げてきたらしいんだ。
両親と一人息子だったみたいなんだけど、離婚で親権を互いに放棄されそうになってたらしい。
そこで日本にいらっしゃった姫様と知り合って、姫様がカサンデュールに御帰還なされる時についてきたっていう話だ』
噂にしてはよくできている。
昔、リルは訳あってこちらで暮らしていた。
7歳でカサンデュールに帰ってきたが、生まれも日本である。
だからあんなに日本語が流暢なのだが、ティンもそうなのか。