ご主人様に監禁されて


「…はあ…」


決してルイは不能ではない。

それなりに性欲だってある。
好きな女と密室で二人っきりなんて、よく考えたら並では耐えられない環境だった。


(年々、メイの色気が増してる気がする…)

それに加えてあの無防備さ。

体は女でも心は子供のままなメイは、そういうことに頭が回らないらしい。

…かといって初心なわけではないのだから、ややこしいところだ。


とにかくチョコレートを、と思って廊下を歩む。


一番奥までリルたちは来ないから安心できる場所だった。

自室まで行き、カバンに仕舞ったままのチョコレートの箱を取り出す。

ついでにキッチンへ行き、紅茶のセットをガラガラと運んでいた。



「…あら、ルイさまではないですか」



ビクッと肩をひきつらせる。

見るとリル単体のようだ。

部屋についているお風呂に入ったあとらしく、金色の髪の毛がしっとりと濡れている。

「あ…ひ、姫さま」

部屋にはトイレやバスルーム、全て備わっている。
夕食を終えれば部屋から出る必要などないのに、なぜ。


「どうなされたのですか?こんな夜中に…早くおやすみにならねば、明日も学校でしょう?」

「メイドに急ぎの用があったので、それを告げに行っていましたの。今日中に体操服を洗ってもらわないとならなくって…」

にっこりと天使の笑みを浮かべながらそう言った。
なるほど、それなら納得である。

「ところで、ルイさまこそどうなされましたの?」

「あ…」


この二つのティーカップをどう説明しようか。


「それは、その…」

「私とティータイムをするためでございます、リル様」


突然の助け舟。
振り返れば、いつぞやのメイを助けてくれたメイドだった。


「なるほど…それでティーカップが二つ…」


メイが気に入っているメイ専用ティーカップを見つめながら、納得してくれたらしい。

「ルイさまもお早いのですから、あまり夜更かしをなさらないようにしてくださいね。おやすみなさい」

お姫様らしい気遣いを残して、去っていった。

「…ふぅ…」

ため息。
バレたら面倒なことになるところだった。

「助かった、ありがとう」
「いえ…メイ様とお飲みになるのでしょう?早く行かないと冷めてしまいます」


理解のあるメイドに本当に感謝しながら、いそいそとメイの部屋へ向かった。
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