ベランダから見える星
「未緒さんは綺麗な人でね。

 私がはじめて会ったのは,あの子が高校生の頃だった。

 ここの子と友達だったからよく遊びに来てて,いつの間にか施設に馴染んでたわ。

 小さい子の面倒をよく見てくれて助かってた。

 高校を卒業した後も暇さえあれば来てくれて…

 そして二十歳になる少し前に妊娠が発覚したの。

 幸せそうに報告に来たわ。

 『自分の名前を一文字とって音緒にする』って言ってた。

 でも幸せは長く続かなかった。

 あなたの父親はよく暴力を奮う人だったの。

 それを未緒ちゃんは耐えたわ。

 音緒への暴力がエスカレートするまでは。

 …あの人があなたに熱湯を浴びせようとした瞬間,何かが切れたって言ってたわ。

 その光景を見た音緒の中には,父親と…“母親"までも恐怖の対象として残ってしまったのね。」


その後,父親は行方をくらまし,未緒ちゃんは自分をも怯える音緒を見ていられず,母親に相談したところ施設に入れられた−…


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