ベランダから見える星
「…ごめん。」


「いや,それは俺の台詞。」


「違う!
 私は音緒から逃げたのっ」


え…?


逃げたってさっき佐々木さんも言ってたけど,どういうこと?



「音緒が私のことを怯えた目で見るのが怖かった。
 母親として見られなくなったらって思うと怖かった。
 このままで音緒が幸せになれないのは絶対嫌だった…
 だからそうなる前に逃げたの。
 音緒を言い訳にして逃げたの!!」


あぁ…この人は本当に音緒を愛してるんだ。


そして音緒も…



「俺…あの時凄く怖くてみんな敵だと思ったし,大きくなるにつれ憎んだよ。
 今でもあいつのことは憎いし,顔もみたいと思わない。
 けど…母さんは違った。
 今日だって母さんのことを聞きにきたんだ。」


「えっ音緒今……っ」


未緒さんは“母さん”に反応したのだろうか,泣き崩れてしまった。


そしてそんな未緒さんに近付いて頭を撫でたのは…音緒だった。


『昔とは逆だな。』と未緒さんが泣いていることに戸惑いを隠せない音緒は,照れ臭そうに笑った。



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