ベランダから見える星
「“しい”じゃなくて“しずな”でしぃちゃん。
 静ちゃんの静に奈良の奈で静奈。」


同じ字が入ってると聞いて,妹が出来たことを実感した。



「私がつけたのよ〜
 可愛いでしょ?」


「翠さんが?」


「そうよぉ。
 だって静一郎さんは静ちゃんの名前つけたのに,私は名付け親になったことないもん。
 勝手に決めたのよ〜」


私の名付け親がお父さん…?


『初めて聞いた』と口にすると翠さんは,意外,と言ったように話してくれた。



「静一郎さん,静ちゃんの名前は絶対自分がつけるんだって前の奥さんと揉めたらしいわよ。
 役所に提出するギリギリまで揉めた結果,静一郎さんが勝ちました,とね。」


…お父さんも私を好きでいてくれた時期があったんだ。


他の親と同じように…


どこで私は道を間違えたのだろう−…



「どうしても静ちゃんと同じ字を入れたくてね。
 でも“せい”って読んだら私だけ仲間外れじゃない?
 だから“しず”にしたの。」


私の字を…?


お父さんの字じゃなくて?


翠さんは,ニコッと笑って『だって姉妹だもん』と私の心を読んでかどうかは分からないけど言った。


翠さんのこと少しは……ね。


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