ベランダから見える星
拓海は嬉しくないのだろうか。


数年ぶりにお兄さんと会えたこと。


話を聞く限りは,仲がよかったみたいだし,頼りにもしてた。


あぁ,複雑なんだ。


出ていくときの言葉が母親と一緒だって言ってたことを…


そして『人が信じられない』そう言っていたことを思い出した。



「お兄さんは…何で今,拓海に会いにきたんですか?」


「事情を聞いてるんだね…
 当時,家を出ていった俺はまったくお金がなかった。
 自分が食べることもままならないのに,拓海を引き取りに行くなんて出来なかった。」


お兄さんは大変だったのだろう。


でも言葉の端々に,拓海への申し訳なさが現れていた。


拓海ははじめて聞く兄の“当時”に黙って耳を傾けていた。



「はじめ2年はホストをして,友人の家に居候させてもらってた。
 この顔のおかげで指名はそこそことれたよ。
 お金が貯まったところで辞めて,色々なところを転々とした。」


ホストをしていたときにあの性格が目覚めたのだろうか?


それとも拓海が知らないだけで元々あんな風なのか…


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