ﾍﾞﾗﾝﾀﾞから見える星
「ごめんねﾙﾅっ」


もう半分は後藤さんの飼い猫になっちゃってるﾙﾅが珍しく家にいたから連れて来た。


わりと大人しいﾙﾅは，外では勝手に飛び出したりせず，ほとんど横を歩いてついてくる。


けど，さすがに人通りが多くなってくると抱っこする。


1時間歩いてようやくたどり着いたお父さん達の家。


ﾍﾟｯﾄ禁止じゃないか確認をしてから中に入り，一応誰もいないときにｴﾚﾍﾞｰﾀｰに乗った。



「お邪魔します。」


この家を出てからは，『お邪魔します』『お邪魔しました』と挨拶するようになった。


それを聞いて翠さんはよく怒るが，お父さんはどう思っているのだろうか。



「お父さんいますか？」


玄関から声をかけるも返事はない。


こんな感じを味わったのは久しぶりだった。


あのﾏﾝｼｮﾝは帰ったら誰かいるし，誰かと一緒に帰れば一人じゃないから。



「…静か？」


「きゃっ」


いきなり声をかけられ驚くと相手も驚いたのか一歩後退した。



「びっくりさせるな」


まったくもって私の台詞だがあえてｽﾙｰした。


< 281 / 401 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop