ベランダから見える星
「……ありがとう。
 私,お父さんに引き取ってもらえてよかった。
 大切な人たちに出会えたから。」


頭を下げて,いや恥ずかしくて俯いた。


その上に,温かい手が乗せられ,そのまま頭をポンポンと軽く叩かれた。


それは…お父さんが照れているときにとる行動だった。



「溝を埋める努力をさせてくれないか?」


突然のお父さんからの申し入れに,私の返事は簡単だった。



「一緒に努力しよう。
 まだ胸の中のモヤモヤ…全部晴れたわけじゃないから,私も努力する。
 …それが親子じゃない?」


今からでも遅くないと思うから。


父と,そして新しい母と小さな妹,4人で家族をはじめよう。


今度は逃げないから。


ちゃんと向き合って,ちゃんとぶつかる。


やっと踏み出せたこの一歩を大切にして。


だからもう少し待ってて。


私にはまだやるべきことがある。


一番避けてきた問題が。


けど,もう一人じゃないから大丈夫。


千香と音緒,実と拓海も,そして葵,いい仲間に支えられているから。


大丈夫。


さぁ,次の一歩を踏み出そう。


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