ベランダから見える星
「俺もな,家庭が複雑なんや。
 俺自身も意味分からへんよぉなるくらい。」


葵が自分のことを喋るのは初めてだった。


何で私に話してくれるのか不思議だったけど,何だか不謹慎にも嬉しかった。



「せーちゃん初めて会ったときから随分変わったやんな?
 それが羨ましくてなぁ,俺も前進まなあかんと思っててん。」


気付けば私は,葵に抱き着いていた。


だって…


すごく辛そうな顔をしてるんだもん。


『助けて』心がそう叫んでいるような気がしたんだもん。


そんな顔でそんな事言わなくていい。


まだ葵は準備の途中。


だから焦らないで。



「…俺,誰かに必要とされたかった。
 誰かに愛されたかったんだ。」


涙を堪えながら…葵はとぎれとぎれにそう言った。


私には葵が必要よ。


同情などではなく本当にそう思った。


言葉にならなかったから…私はより強く葵に抱き着いた。


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