ベランダから見える星
「せーちゃん…
 少しだけ許して。」


そう言うと葵は抱きしめ返してくれた。


すごく落ち着けて…穏やかで,なんだか温かかった。


ずっとこうしていたい,と心の底から思った。


『好き』前に言われた言葉に『好き』と返したらいつもこんな気持ちでいられるのかもしれない。


でも…そんな想いでそんなこと言うの?


本当に『好き』なの?


そう問い掛けるもう一人の私がいる。


答えは…『分からない』


だってこの間までは大嫌いで,距離を置きたい人だった。


そんな気持ちが少しずつ変わってきているのは確かだけど…


“親に愛された”という記憶がなかったから,私は分からない。



「好きです。
 返事はいつでもいい。
 だから断らないで下さい。」


ぎゅっと強く抱きしめられたけど,苦しくなくて。


そんなところに愛情を感じた。


私は『ごめん』と『ありがとう』を呟いた。


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