ベランダから見える星
「せーちゃんどうし」


「いなくならないでっ
 葵のこと大切だから。
 嫌いじゃないからいなくならないで…」


もう嫌よ…大切な何かがなくなるのは。


半ばパニック状態の私を宥めるように頭を撫でてくれる葵に,私は『いなくなっちゃやだ』と子供みたいに何度も繰り返した。



「いなくならないから。
 勝手に俺を消すのやめて〜」


葵の困り果てたような声を数回聞いた頃,やっと我に帰った。


えっと…


またもや道の真ん中で何してるんだか。


やけに冷静なのはまだ頭か体がついてこれてないからだろう。



「にしても積極的なせーちゃんも可愛いなっ」


素面でこんな歯の浮くような台詞よく言えるよね…


さっきまでの変な空気はどこか飛んでいったみたいで,その後は普通に喋って普通に別れた。


1人になってからは,『葵の本当に言いたいことはまだ聞けないんだな…』とか『葵のこと少しでも知りたいのに』とか恋する乙女みたいに葵の事ばかり考えてた。


風邪でも引いたかな……?


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