ベランダから見える星
「本当ですか?
 …頑張ります。
 はい……ありがとうございます。」


ようやく電話を終えた拓海は呆然と立ち尽くしていた。


声をかけるべきなのか,そうじゃないのか…


御礼を言ってたくらいだから悪い話じゃなかったんだろう…と信じたい。


そっと様子を伺っていると,くるっと拓海がこっちを向いた。



「親父が写真続けていいって。」


え……


あんなに反対してたのに…



「条件付きだけどな。
 高校で首席をとり続けることと,親父の指定した大学に行くこと,だってさ。」


『まだ信じられないけど』と言いつつ顔はだらし無いことになってる拓海。


…信じられない。


あの一ノ宮拓也がたとえ条件付きでも写真続けていいだなんて。



「たっく−みくんっ!」


…今,場の空気に似合わない声が聞こえた気がした。


それは拓海にも実にも聞こえたみたい。


そっと廊下に続くドアに目をやると数秒後,思いきりドアが開いた。



「よっみんな元気にしてたか!」


いやいや,まてまて。


ここはあなたの家じゃありませんから。


何堂々と入って来てるのよ…



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