ベランダから見える星
「拓真さん…不法侵入ですよ。」


「鍵開けっぱなしにしてる方が悪い。」


子供じゃあるまいし,どんな屁理屈言ってるんだか。


にしても狙ったようなタイミングで現れたもんで。



「それより拓海,入賞おめでとう!
 まさかこんなに早く…むかつく−っ」


感動物語風になるのかと思ったら,いきなり弟を羽交い締め。


祝いに来たのか,締めに来たのか分からない…


この人,たまに本当に拓海の兄なのか疑わしくなる。


そしてお母さんがどんな人なのか気になる。


本人の前じゃとても言えないけど,拓海は父親似だと思う。


でも拓真さんはどう見ても父親似ではない。


だとしたら母親似…しかないんだけど,拓海の話を聞いてる限りじゃ可憐な人にしか思えない。



「静,どうした?」


「いやっ何でもないです?」


何故疑問形?何故敬語?


自分にツッコミを入れながら,頭の中の雑念を追い払う。


今日は拓海のおめでたい日だからね。


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