ベランダから見える星
多分嬉しいんだろうな。


拓海は拓真さんと再会してから変わった。


お母さんのこと許せないとか子供みたいに意地を張らずにいられるくらいに。


素直とまではいかないけれど。



「あっ俺今から打ち合わせだった!
 また来るっ」


ドタバタと音を立てて慌ただしく出ていく拓真さんを,私は嵐のような人だなぁと思いながら眺めていた。


まるで……葵みたい。



「ったく,さすが兄貴っていうかなんというか…」


「拓真さんと中身正反対だよな〜」


ケラケラと笑う実に視線をやった拓海は一言。



「実…おまえ居たの?」


その言葉にへこんだ実は,ソファーの上に膝を抱えて『落ち込んでます』と言わんばかりに座った。


もちろん放置して私は部屋に戻った。


何も言わずに部屋に戻った私を不思議そうに拓海が見ているのがわかったけど,何も言えなかった。


私は今情緒不安定なんだろうか…?


ただ“葵”のことを少し思い出しただけなのに,涙が溢れ出てきた。


この感情がなんなのか分かってる。


いや,今やっと分かったの。


でもまだ…


本音は言えない。


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