ベランダから見える星
「けどさ…
 親父は違った。
 どの親も子供が大切なんて綺麗事だったんだ。
 子供を大切に思えない親だって存在するんだ。」


音緒は肩を震わせながら淡々と話した。


私も,親は無条件に子供を大切に…愛するものだと未緒さんやお父さんを見て思っていた。


だから……


あの人とも和解出来るんじゃないかと思って会いに行こうと思ったの。


なんて,私の場合は思ったんじゃないや。


思い込みたかったんだ。


じゃないと真っ暗で前に進めない。



「みんなには昨日話したんだ。
 自分のことのように泣いて怒ってくれんの。
 それ見て俺,幸せじゃん,恵まれてんじゃんって思ったんだ。
 親父に大切にされなくても,母親が大切にしてくれる。
 一生ものの仲間が支えてくれる。
 それって中々巡り逢えるものじゃないと思わないか?」


……本当だ。


なんでこだわってたんだろう。


あの人に突き放されても,大切なみんながいるじゃない。


不器用だけど優しいお父さん,今じゃ大好きな翠お母さん。


自分のことのように怒って泣いて笑ってくれる千香,音緒,拓海,実。


いつの間にか大切な存在になっていた……葵。


みんないる。


みんなが照らしてくれるからちゃんと歩けるじゃない。


< 310 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop