ベランダから見える星
「ありがとね。
 私,大切なことに気付いた。
 これが近すぎて分からないってことなのかな…?」


「何に気付いたか分からないから知らねぇよ。」


絶対言わない。


恥ずかしいからねっ



「大丈夫!
 歩いていけるから。」


そう言うと『意味不明』と呆れたように笑い,ソファーに寝転んだ。


ここ私の部屋なんだけど。


口にはせずに,私は携帯を手にした。


今すごく葵に会いたい。


大切だよって伝えにいきたい。


いきなり押しかけたら驚くかな…?


葵と仲がいいクラスの人から住所を聞き出し,私は出掛ける準備をする。



「出掛けんの?
 翠さんとこ?」


「今日は違うよ。
 じゃあ行ってくるっ」


音緒を部屋に残して私は家を出た。



「静!」


マンションを出るとコンビニ帰りらしい千香に会った。



「翠さんのところ?」


「ううん,葵のとこ行ってくる。」


千香の表情が曇った。


すぐに笑顔で『いってらっしゃい』と言われたけど…


どうかしたのかな?


と思いつつ,私は千香に手を振り,調度来たタクシーに乗り込んだ。


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