ベランダから見える星
葵の家を出たのはすっかり日が沈んでしまった頃。


ずっとくっついて,いろんなことを話していた私たちの距離は…前より少し近くなったはず。


『送っていく』と言う葵に,悪いから,と断ると,もう少し一緒にいたいから,なんて照れたようにいうから。


『私も』って柄にもなく口にしちゃったじゃない。


前に泊めてもらったときは…


あれ?



「葵って一人暮らしじゃなかったっけ!?」


「今頃思い出した?」


ニヤッと笑う葵に何も言えない。


私どれだけ記憶力ないんだって話だよね。



「あれは親戚の家。
 あの母親のいる自宅にあんな状態だったせーちゃん連れていけないでしょ?
 おばさんは滅多にあの家に帰ってこないから俺もよく泊まるし。」


まだまだたくさんある私の知らない葵の過去。


そして葵の知らない私の過去。


いつか話せたらいいな。


そのときは聞いてくれるかな。


受けとめてくれるかな…。


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