ベランダから見える星
「せーちゃんまだ決まってなかったの…?」


恐る恐る声をかけてくる葵に頷いてみせると,『そっか』と何だか嬉しそうな返事がきた。


進路決まってるのがそんなに偉いかっ


と少しムッとし,そっぽを向いて歩き出すと葵が慌ててついてきた。



「ちょっせーちゃんどうした…っ」


パタパタという足音の代わりにベチッと痛そうな音がした。


反射で振り返ると葵が盛大に転んでいた。


……手つきなよ。


こんな子供っぽいとこ放っておけないんだよね。


なんて恋する乙女みたいなことを思いながら,『大丈夫?』と葵に近付く。



「……大学行かないんだ?」


「学校よ。
 関西弁使わなきゃでしょ。」


廊下に突っ伏したまま喋る葵の横にしゃがみ込んで,頭をポンと叩く。



「俺さ…
 せーちゃんは大学行くと思って早く釣り合う男にならなと思ったんだ。」


方言って…まぁもういいのかもね。


とりあえず,人の進路勝手に決めないでよ。


大学行くなんて一言も言ってない。


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