ベランダから見える星
「今,君と静ちゃんの間には深い溝が出来てるの。
 それはすぐに埋まるような深さじゃないこと…分かる?」


まるでいつか溝が埋まるというように言ったお母さんの表情が沈む。


『もしかしたらあの人とも…』と小さい声で呟いたのが聞こえたけど,泣きそうなお母さんの顔を見て何も言えなかった。



「今すぐ埋めなきゃいけないんですよっ
 僕たちは!」


いきなり立ち上がり自己中なことを言い出す


私は別に埋めたいだなんて思ってない。


だって少しも理解し合おうとか,許そうとか思わないんだもん。



「とにかく父さんの連絡先教えてください!
 そうしたら帰りますっ」


「嫌。
 何されるかわかんないし。」


即答する私に京介はギャンギャン吠える。



「…“京介”君。
 本当は何を言いにきたの?」


震える声に視線を向けると,お母さんはまるで…置いていかれた子供のような顔をしていた。


図星だったらしい京介は舌打ちをした後,律儀にも本当の目的を話し出した。


でも…


どうせなら聞きたくなかったな。


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