ﾍﾞﾗﾝﾀﾞから見える星

向き合う相手

みんなの進路が最終的に決まったのはｼﾞﾒｼﾞﾒした梅雨の最中だった。


音緒と拓海は変わらず，美容専門学校とK大。


実は千香の親の会社に就職予定。


千香は教師になるため，教育大学。


私はｶﾅﾀﾞに語学留学。


みんな夢に向かって歩き始める準備を今…この暑い夏にやっている，はず。



「ちょっと実っ
　勝手にｱｲｽ食べないでよ！」


「いいだろ別に〜」


「静，拓海は？」


「邦光さんのとこ。
　音緒…人の話聞いてなさいよ。」


はい，見ての通り私たち，まともに勉強などしておりません。


自由気ままな毎日を送ってます。


夏休み…なくていいんじゃないかと思うくらい。


でも，私は別。


とくに今日は。


大袈裟に言えば運命の日ってくらい。


お父さんからの着信を待っている携帯をぎゅっと握りしめる。


…今日はあの人に会う日。


あれから数カ月，進路以外にも色んなことがあった。