ベランダから見える星
けどそう思ってることに限って起こってしまう。



「あら,やっぱり帰ってきてくれたの?
 貴方まで?」


私とお父さんの動きが止まる。


まさか出掛けてるなんて思ってなかった。



「そちらの方は?」


その言葉にハッとしてあの人の表情を確認する。


やっぱりお母さんこと知らない…聞いてないみたい。


外用の顔をしている。


だから知られちゃいけない。


絶対に…。



「ご近所さんなのかしら?
 二人は早くお家に入ったらどう?」


あの人のあの顔が嫌い。


愛想よく,綺麗に微笑むその顔が。


だってその表情が家に入った途端,崩れることを知っているのだから。



「どうしたの二人共。
 早くみんなでお話しましょ?」


キモチワルイ


お話?


そんなことした記憶なんて遠い昔だったせいで忘れたよ。



「静…
 とりあえず,な?」


小声で話すお父さんの気持ちが分かった私は首を縦にふり,鍵を開けようとしているあの人へと近付いた。


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