ベランダから見える星
「言っておくけど私も帰らないよ。」


あの人の纏う空気が一瞬で変わった。



「何を言ってるの?」


「だから帰らない。
 今日は話を…お願いをしにきただけ。」


私はあの人のことより,淡々と話せている自分に正直驚いてる。


今まで私は何をしていたんだろう。


何をこの人に怯えていたのだろう。


頼れる人がいるからこんな風に思えるようになったのかな。



「これ以上関わらないでほしいの。」


「はぁ?」


「もう十分でしょ?
 私たち…そろそろ開放されていいと思う。
 幸せになりたいの。」


今が楽しい。


辛いことも悲しいこともあるけど…


生きてるって感じがするの。


今まで幻想だって思ってたことが…現実になった。



「私が何をしたっていうの!?
 きちんと育ててあげたじゃないっ!」


冗談じゃなく本気で言ってるなら,この人のいう『きちんと』の基準はおかしい。


お父さんも横で眉間に皺を寄せている。


あの人の横にいる京介は無表情だ。


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