八年目のシュート
振り返らない私は変だろうか。
どれくらい後ろにいるんだろう。
すぐ後ろ?
一メートルくらい離れてる?
私はゆっくり、首を動かした。
目の前に、腕で身体を支えながらくつろぐ萩原の姿。
「オレ、賭け弱いから」
萩原は、私を見て言った。
そしてその後も、私を見ながら話し続けた。
「八年前に、すっごくでかい賭けに負けた。人生最大の賭けだったんだけどな」
萩原の声が響いた後、体育館に変な沈黙が流れた。
とっさに萩原は立ち上がり、床を強く打ちながら変わらないフォームでランニングシュートを決めた。
「さすが現役!」
一樹が拍手をする。
それを合図に、男子がスリーオンスリーを始めた。
全てがスローモーション。
萩原の顔が、私の前を往復する。
来なければよかったかもしれない。