俺、兄貴になりました
さて、と。
ここからが1番大変だ。
何しろあの双子は超大人気アイドルなんだから。
連れ出すのは容易ではない。
よし、と気合を入れて、再び人の集団の中に入った。
人がいっぱいいすぎて中々中に進めない。
「キャー!!恋くーん!!」
「蒼くーん!!こっち向いてぇーーっ!!」
そしてさっきよりもうるさい。
つーか、このファン達って、双子の区別つくのか?
そう思いながら前へ進んでいくと、やっとのことで双子の姿が見えた。
あちこち触られ、双子の顔は不機嫌になっている。
これは普通に助けに行っても無理だな。
俺はポケットに入れていたスタイリストとかかれた仕事用のネームカードを首に下げた。
「すみません、そろそろ衣装替えの時間ですので、これで失礼させて頂きますね」
ニッコリと営業スマイルを浮かべると、ファンがピタリと止まった。
よし、今のうちだ。
「いくぞ、二人とも」
「「おー」」
集団を抜け出したところで、双子が言う。
「ねー、なんでスタイリストやってんのー?」
「俳優やったほうがいいんじゃない?絶対売れるし」
は?
「何バカなこと言ってんだお前ら。俺みたいな平凡が売れるわけねぇだろ」
「「うわー、自覚してないんだ。もったいない」」
綺麗にかぶったな。
さすが双子だ。