俺、兄貴になりました
「あのっ、待って下さい!蒼くん!」
後を追ってきたのであろう、一人のファンの子が呼び止めた。
「ずっとファンだったんです!これ受け取って下さい!」
そう言って差し出したのは、クッキー。
多分たまたま買って持っていたやつだな。
でも、俺の勘だと多分……。
「ありがと……」
「ごめんね、そういうのは受け取れないんだよ」
受け取ろうとした手を掴み、俺は断った。
これを受け取ってしまえば、また双子が傷つくと思ったからだ。
「行こう、皆が待ってる」
双子の背中を押して今度こそファンから離れ、そのまま店に入る。
「おい、兄貴!」
「なんでさっき……」
「ほれ、変装しろ」
ガボッと双子の頭に帽子をかぶせ、顔がバレないようサングラスをかけた。
もちろん同じものじゃ双子だと怪しまれるから、違うもの。
そして二人を連れて店を出る。
「あ!戻ってきた!」
「遅い!早く行こうよ」
「悪い悪い。はいはい、行こうなー」
待ちくたびれた弟達と共に歩きだす。