俺、兄貴になりました
「おい、兄貴!」
「あれじゃあの子が可哀想だろ!」
後ろから声をかけてくる双子に、足を止めて言った。
「あの時、蒼じゃなくて恋だったろ」
俺の言葉に、双子は目を見開いた。
「なんで分かったんだよ……?」
「どうして……」
なんで、ねぇ。
「勘だよ。なんとなくだ。正直いって、まだお前らの区別はつかねぇ。
けど、これは兄貴として言わせてもらう。ファンを大事にするのはいいことだけど、まずはお前ら自身を大事にしろ」
「「!!」」
「お前らがファンのために傷つく必要はない。違うんだったら違うって言えばいいんだ。
お前らが傷つくなんて、兄貴は嫌だからな。ほら、行くぞ」
この双子は優しすぎるんだ。
他人が傷つくくらいなら、自分がって思うんだろう。
長男の体質っていうやつか。
「うわっ!」
ドンっと急に後ろから衝撃をうけ、一気に重くなった。
「お前らっ……」
双子が後ろから飛び乗ってきたのだ。
「俺らのこと見分けられるようになるまで兄貴で遊ぼうか」
「賛成ー、面白そう。じゃ、早速、兄貴、どっちがどっちでしょーか」
はぁ!?
「右が恋か!?」
「ブー。残念、右が蒼でしたー」
「兄貴の負けー」
この双子め!
「分かったから降りろ!重いわ!」
まぁ、少しは信用してくれるようになったってことで。
それでいいか。