俺、兄貴になりました
「俺、何にもできなくてっ……!」
「うん」
「何か恋のためにやろうとしても…ひく…結局それが恋を苦しめることにしかならなくてっ……!」
「うん」
本当はこうやって泣きたかった。
何をしても、俺じゃ恋の力にはなれなくて。
空回りばっかで。
何もできない自分が悔しくて、ムカついて。
頭の中、ぐちゃぐちゃになってたんだ。
同じ日に生まれて、同じ時間を一緒に過ごしてきたのに。
どうして、こんなにも違うんだろう。
苦しみを背負う重さも。
兄としての責任感も。
ただ、ほんの少し腹ん中から出てくる時間が違かっただけで。
「兄、貴……」
「ん?」
「恋を、助けてやってよ……」
俺の大切な、兄なんだ。
俺の…。
「大切な、片割れなんだ…っ…」
片割れが辛いと、俺も辛いよ…。
「おう。任せとけ」
「ありがとう、兄貴…」
そして俺はこの日、初めて本当の笑顔で笑ったんだ。