俺、兄貴になりました



あの後、兄貴は俺たちの事務所に乗り込んで、社長を脅した。




「今後、弟に勝手なマネしたら、俺がこの事務所潰しますから。

言っておきますが、いつでも潰せるんで、そこんとこ肝に銘じて置いてください」




満面の笑みを浮かべた兄貴だけど、目だけは本当に笑ってなかった。



兄貴なら事務所のひとつやふたつ、潰すことなんて容易いご用だ。



芸能界に使われてる衣装やらデザインやらは、ほとんど兄貴が作ったものなんだから。



兄貴の服が着たいがためにこの世界に入ってきた人も少なくないから、

提供するのをやめてしまえば、契約してる所属タレントはもちろん辞めていくし、

人気のガタ落ちは必須。


自然的に事務所は倒産になるというわけだ。




前に遊園地に行くって言って休みをもらえたのも、実はこのおかげだったりする。


あの日以来、社長は俺たちに激甘になった。


きっと兄貴を恐れてるんだろうね。




だって、社長に兄貴って言葉を言っただけで、

『どんな用件だい?なんでもしよう!』



って、すごく慌てちゃって。


何回同じことしても反応するから面白い。



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