俺、兄貴になりました
「……」
ん?
恋に視線を戻すと、恋は兄貴を見て「んー…」と唸っていた。
あ、これ兄貴に相談してみるか悩んでるな。
面白いから、しばらく観察。
「……でもなぁ……んー…」
悩んでる、悩んでる。
早く言ってみればいいのに。
兄貴だったら喜んで迎え来てくれるぜ。
「……よし」
恋はやっと席を立って、キッチンで翠と夕飯を温め直している兄貴の元に向かった。
行った行った。
そんな恋の姿を見るだけで嬉しくなる俺。
だって、一人でなんでもやろうとして、誰にも頼ろうとしなかった恋が、今では自分から頼ってんだぞ。
兄貴限定にだけどさ。
嬉しくもなるじゃん。
よかったな、恋。
本当によかった。
頼れる人が出来たんだ。
もう一人で抱え込む必要はないんだから。
恋が笑うから、俺も笑う。
恋が泣くなら、俺も泣く。
元気がないなら、俺も一緒になって落ち込むし、
お前が嬉しいことは、俺も嬉しい。
お前は俺で、俺はお前。
片割れの存在って、そんなもん。