苦手なあいつ
どれくらい時間がたっただろう。もしかしたら数分だったのかもしれない。杏奈が顔を上げると、隆一もスッキリした顔で外を見ていた。

向こうから杏奈と仲良しの美香がくる。

「ここにいたの?探したのよ、杏奈がいないとわからないことが多くって」

「ああ、ごめん。文化祭の準備中だったよね」

「……杏奈?もしかしたら、泣いてた?」

「え?……あ、うん。隆一に泣かされた」

杏奈は子供のようにすねた顔をして、隆一を指差した。

「え??」

「ちょっと、隆一くん、杏奈になにしたの?」

「い、いや、僕は何もしてないよ」

美香は疑いの眼差しで隆一をじっと見る。

「ほ、ほんとだってば!」

「杏奈?」

「弱音はかされて、頭なでられた。子供扱い」

「いや、いや、いやいや……」

隆一の弁解する焦った顔を見て、また杏奈が笑い転げると、図書館員が顔を出し、「しー」という顔で指を1本口に当てた。

三人はペコペコと頭を下げ、ヒソヒソ話した。

「なんだ杏奈、話聞いてもらってたのね。よかったじゃない」

「まあね。すっきりしたし」

「ま、僕も話聞いてもらったからな」

杏奈は美香とこのまま学校に戻ることにしたらしい。僕も明日は部活に行こう。

……一つだけどうしても確かめたいことがあった。
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