薬品と恋心
ジーニアスは何か言いたげにしていたが、何もいわずに下を向いた。
「…ティア」
しばらく黙っていたジーニアスはゆっくりとティアに顔を向けた。
真剣な瞳。
その中に切なさを感じてティアの胸は締め付けられた。
「いいたくないことは言わなくてもいいけど…」
ーけど、なに?
ティアは黙ってジーニアスの言葉を待った。
「外に行くときは声をかけて」
「…どうしてですか?」
「心配だから。何かあったとき、助けられないのは嫌だ。オレがティアを助けたいんだ」
その言葉は素直に嬉しい。
ーでも。
(きっと私はジーニアスを頼れない)
頼ってしまったらティアはひとりではもう立ってはいられそうにない。
ーだから、頼らない。
「…ありがとうございます」
ティアは口の端をあげて薄く微笑んだ。