薬品と恋心
レティシアは廊下を歩きながら考えていた。
あの様子だとジーニアスはもうひとつの条件がそろうまであの子に薬を造らないに違いない。
(あの子に文書を教えたのは正解かしらね)
あの子はレティシアが指し示した文書を読んだはずだ。
もしあの子の探しているものがあの文書に書かれていたとすれば、あの子はきっと解除薬の材料を集めに奔走することだろう。
材料が集まったなら、あの子は必ず調合師に依頼を出すことだろう。
それがジーニアスであるか、他の調合師であるかはわからない。
でも依頼が来れば「時間が必要だ」とごねていたジーニアスは断れない。
仕事人としてのプライドと過去に犯した過ちから断れるはずがないのだ。
(だいたい、解除薬を飲ませたあとはあの子の気持ち次第だっていうのに)
時間があったらどうなるというのだろう。