薬品と恋心
市のたつ日
「これとこれと、あとこれも下さい」
ティアは大通りに陣取っている薬草の露店にいた。
市のたつ日は遠くから珍しいものがそろう。薬草も同じく、地方のものがこの日ばかりはそろうのだ。
解除薬の文書を見つけてからティアは薬の材料を探すことに奔走していた。
簡単に手に入るものから入手困難な品まで。
市に来たことで、大方の品はそろった。
ティアは薬草を購入すると、両手にかかえて歩きだす。
「あ、すみません」
人が多いので否応なく人にぶつかってしまう。
よけながら歩いていたのだが、ひとりに気をとられて、別の人にぶつかるということを繰り返してしまっていた。
(ジーニアスに連れ回されたときはそんなにぶつからなかったのに)
いま思えば、守ってくれていたのかな…と思う。
ぼんやりと考えていたら、また人にぶつかってしまった。