薬品と恋心
「すみません…あっ」
かぶっていたフードがその人の腰に差していた剣に引っ掛かり、とれてしまった。
刺すような視線を感じて上を向いた瞬間、身がすくんだ。
ボサボサの髪にモジャモジャと生えたひげ。
そして、チューリップハットの下からのぞく暗くよどんだ瞳がこちらを捉えている。
(なに…なんなの?)
ティアの背中を冷たい汗が滑り落ちる。
早くここから立ち去るべきなのに、足が動かない。
「いらっしゃーい!!いらっしゃい!!ただいま焼きたてのパンはいかがですかー」
屋台の売り子の大きな呼び込みの声が聞こえて、ティアはハッと我に返った。