薬品と恋心
「おや、ジーニアスさま」
執事はジーニアスに気づいて声をかけたが、ジーニアスはその横をすり抜けるとレティシアに詰め寄った。
「どういうことだ!?」
「いきなりなにかしら?」
レティシアはとぼけるようにゆっくりとこちらを見た。
「全部聞かせてもらった。なんでティアが『愛の秘薬』の解除薬の材料を集めてるんだ」
「さあ?文書でもみつけたのではないの?」
「文書?まさか…」
「これで、あの子が誰だかはっきりしたわね」
レティシアの言うとおりだった。
どうやってティアが文書を手にしたかなんてわからない。
しかし、『愛の秘薬』の解除薬の材料を集めているということはー
つまり。
ティアはジェンティアナだ。
ー今、はっきりと確信した。
「それよりも、いいの?あの子、薬草とりにすぐにでも出立しそうよ?」
確かに盗み聞いた限りティアの材料の集めかたは尋常なスピードではなかった。
「ーっ!!」
ギリッと歯をかみしめるとジーニアスはすぐに踵を返して部屋から出ていった。