薬品と恋心
しばらくそうしているうちに声は遠ざかっていき、男の子は詰めていた息を大きくはきだして笑顔を見せた。
「ごめん、いきなりで驚いたよね」
「…何したの?」
「んー、勉強抜け出してきた」
特に悪びれた様子もみせず、にかっと笑いながらそう答える。
先ほどの声は男の子を探しに来た先生だったというわけだ。
半ば呆れながら立ち上がる男の子を眺めると、
「だってさぁ、こんなとこに来てまで部屋で勉強なんてやってられないって!こんなにキレイなとこなんだよ?外で学ぶことっていろいろあると思うんだよね」
という自信満々な言葉が返ってくる。
単に勉強をサボる言い訳を言っているはずなのに、腕を頭の後ろで組んで空を見上げる男の子に不思議な魅力を感じた。