薬品と恋心
「ありがとうございます!」
「…明日取りにくる。用意して待っていて」
「あ、の…でも」
引き受けてくれたジーニアスの瞳の中にさみしさと苦しさがあるように感じて、ティアは一瞬言葉をつまらせた。
「…取りに来させるなんて申し訳ない…です。いつものように私が屋敷に…」
なぜか視線をそらすことができなくて、ティアはジーニアスの瞳を見つめながらまるで熱に浮かされたように言葉をつむぐ。
「だめだ」
ジーニアスはせつなげな瞳を揺らしてティアの頬に触れた。
触れられた瞬間、ティアの鼓動がドキン、と強く跳ねた。
「いつまた狙われるかわからないんだ。単独行動は避けてほしい」
「…ジーニアス」
ティアは自分の頬が次第に紅潮してくるのを感じていた。
「ずっと宿にいろとは言わない…でもせめて明日は…」
次第に顔が触れそうなぐらいに距離を詰められ、耐えきれなくなったティアは少しうつむいた。
「…わかりました。明日は宿にいることにします」
その言葉を聞いてジーニアスがほっとしたのが見なくてもわかった。
「じゃあ、また明日」
ジーニアスはティアの頬から手を離した。
離れた手を追って視線を上向けるとそこには穏やかな笑顔があった。
「はい!!」
ティアは紅潮した頬をごまかすように満面の笑みを浮かべると宿屋へと帰っていった。