薬品と恋心
「もうひとりでどこかへ行かないでほしいんだ」
「…っ」
ジーニアスの言葉にティアの胸がズキン、と痛んだ。
「ティアが迷惑をかけたくなくて、何も言わずに採取に出掛けたことはわかってる。理由があっての行動だということも今はわかってる。でも…」
ジーニアスはティアの頬にそっと手を触れた。
まるで壊れ物を扱うかのような優しい掌にティアの心も次第に穏やかになっていく。
「なにか困ったことがあるならオレを頼って。オレがティアを守るから。…だから、約束して。ひとりでどこかへ行かないって」
せつなげな瞳の中に温かさを感じて、ティアはそっと頬にあるジーニアスの手にそっと自分の手を重ねた。
ージーニアスはどうしてこんなにも私を喜ばすようなことをいうのだろう。
ティアの目に自然と涙が浮かぶ。
「…はい。約束します」
ティアは心から穏やかに微笑んで瞳を伏せた。
幸せな涙がひとすじ頬を滑り落ちていった。